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-グレーゴル・ザムザがある朝、なにか不安な夢から目を覚ますと、自分がベッドで巨大な虫に変わっていることに気づいた。
(書き出しより)
上記の書き出しに惹かれて買ってみたものの、内容は正直何と申しましょう、これは悲劇を書きたいのだろうか?
ザムザは家族のためにつらいセールスの仕事をしながら、クリスマスに妹を音楽学校に通わせてやろうかと考える優しい青年だ。
そんな彼が、夢から覚めるとなんともグロテスクな生命体へと変身し、
以後、もの悲しい幽閉生活を強いられることになる。
この虫の描写がなんとも気色悪い。赤い斑点だとか、ネバネバしたのが足から出てるだとか、口から緑色の液体が出てるだの、作者は絶対虫嫌いに違いない。こんな、どうしようもない姿にされた兄貴を妹だけは、世話してくれるんだけど、これも、「大丈夫、お兄さん?」なんて、やさしい言い回しは全然なく、むしろ、メシに腐ったチーズとか食べかけの食いもんとかを差し出すような、しょうがないからやってるんだぞ的なそんな世話の仕方なのだ。
そんな、かわいそうなグレーゴルさんは、ある日お父ちゃんに、母ちゃんを襲ったなんて勘違いされて、林檎を投げられて重症になっちゃう。
そんで、その傷が原因で死んじゃう。背中には、埃の被った腐った林檎が突き刺さってたそうだ。
この、かつてグレーゴルさんだった干物を目にして、家族は重荷が取れたような感じがして、希望を持って生きていこうと思うのであった。
何これ?グレーゴルさん、むっちゃかわいそうなんですが。
小説のテーマは家族視点から見ると「依存からの解放と自立」ですかね?
じゃあ、逆にグレーゴルさん視点はというと、「人間、容姿 > 中身」な悲しいブサイク全否定テーマ。
まぁ、冗談はこのぐらいにして置いて、この小説は、日常の突然の崩壊により、社会的な宿主を失った家族がかつて宿主であった社会的成長を妨げる兄貴を破壊し、将来に希望を見出す内容だと考えた。
最後にグレーゴルが選んだ家から、違う住み心地のいい家に移り住もうと考えたのは、栄養を吸い取った寄生虫が宿主の体を食い破り外に出ることと同じ・・・つまり、この変身というタイトルは、グレーゴルが虫に変身した意味だけではなく、家族の変化の意味での「変身」の意味も兼ねていると思う。
ちなみに手塚治虫の短編にもこの「変身」をモチーフとした作品がある。
コッチの場合は、科学技術で人為的に虫にされてしまった男の話で、最後は蛹となり、蝶となり、元の作品のもの悲しいラストとは打って変わったものだ。たしか「ザムザ復活」だったと思う。タイトルがまさにそれ。
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